質問回答集

福厳寺では壇信徒の方や小幡七福神巡りの方々からノートに質問をいただき回答しています。ノートから選んで掲載します。

質問(1)

問い:仏教で「願いが叶う」と言われるようになったのはいつからでしょうか?

答え:それは「大乗仏教」の思想が広まった頃からです。仏教は厳しい修行を実践することにより悟りを開くという上座部仏教主流の時代から、在家の人達も、苦しい修行をしなくても「慈悲」の実践(人の苦を除き、楽を与えたいという心)により悩み苦しむ人達と共に救われるという「大乗仏教」の思想が興り、北伝して、日本にも伝わりました。生老病死という、人生は思い通りにならない事ばかりですが、無常や無我を体得し慈悲の実践という「菩薩行」により安らかな心を保ちつつ共に歩むというものです。
菩薩の代表で慈悲の象徴である観世音菩薩(観音様)は人の悩みや苦しみの声を聴いて私たちの廻りに現れて救って下さる仏様です。お寺で手を合わせ、救いを求めたり、願いごとをしている人の姿を見かけますが、大きな声で願いごとを言って下さい。観音様はその声を聴いて他の人の姿を借りて現れて私たちを救って下さいます。

質問(2)

問い:インドで生まれた仏教が現在インドでは信仰されていないのはなぜ?

答え:仏教は2500年前にお釈迦様によって一切の生命は(男女も人種も身分も)平等であるという主義を唱えました。一時、仏教はインド全体に広がりましたが、16世紀にイスラム教のムガール帝国が席巻し仏教は他の宗教に寛容で争いを好まないため弾圧され衰退しました。第2次世界大戦後もインドではカースト制度という生まれながらにして身分が決まっている身分制度が根強く、現在ヒンズウ教が主流となっています。

質問(3)

問い:母の七回忌にはお世話になりました。母の人生を振り返り、自分のこれからの人生を見つめる良い機会となりました。ところで、法事の際にお焼香は何回したら良いのでしょうか?

答え:法事では2回のお焼香をお願いしています。右手の三本の指で香をつまみ、(左手は下に添え)額の前で念じます。1回目はありがとうという感謝の念をもって、2回目はどうぞ安心してね、と念じて香を焚きます。最後に合掌・一礼をします。故人にお願いばかりしても喜びません。故人の思いに叶うような生き方をしていますと報告し、香りのご馳走をお供えすることが喜ばれると昔から云われています。

【お焼香は2回で】

質問(4)

問い:仏様を拝むとき、手を合わせるのはなぜ?

答え:手を合わせ拝むことを「合掌」と言います。仏様に合掌しましょう。ご先祖様に合掌しましょう。いただく食べ物に合掌しましょう。
こころとからだを整え合掌すれば自ずと人や物に対する感謝の気持ちがわいてきます。
今、合掌している自分が生かされていることが実感され、自然と感謝の念が生じるのです。そして私たちが持っている「慈悲の心」が現れるのです。 もし、あなたがこのことを疑うなら、実際に試してみてはいかがでしょうか。

質問(5)

問い:知らない人とも心を分かち合って楽しく生き るにはどうしたら良いのでしょう。

答え:感謝する気持ちを持ちましょう。
毎日いただくご飯一つとっても、数え切れな い程多くの見知らぬ人の手を通して、はじめて 私たちの食卓にのるのです。
誰一人として一人で生きていくことは出来ません。多くの人のおかげで私たちは生かされて いるのです。「知っている」とか「知らない」と かの垣根を取り払いましょう。同じ人間として、同じ宇宙に生きている「因縁」があるのです。会った瞬間から「知らない人」ではなくな るのです。

【一期一会】感謝の気持ちを抱いて、出会いを大切に・・・

質問(6)

問い:私たちがしんたいしょうがいしゃの人たちを どのようなときに助ければいいのですか?  変に声をかけてよけいにいやがられないよう にするにはどうすればいいのですか。

答え:あなたがこのようなことを考えたり、質問し たりすることは大変すばらしいことです。
あなたがからだが不自由な人を見て、助けて あげたいと思った時に助けてください。思った だけでは相手の人は喜んでくれません。思った ことを行動に移してください。
たとえば、からだの不自由な人が電車に乗っ てきて、あなたが席をゆずりたいと思った時に は声をかけてゆずってください。白いつえを持った目の不自由な人が道路を渡ろうとしているのを見て、あなたがきけんだなと思ったら、手を引いてわたるのを助けてあげてください。相手がいやがるかどうかは、そのひとの気持ちになって考えればしぜんと分かってきます。

質問(7)

問い:天国や地獄はあるのですか?

答え:あなたは自分自身で考えて「天国や地獄はあるべきだ(あった方がよい)」と思いますか。それとも「天国や地獄などない方がよい」と思いますか。答えはあなたの心(考え)の中にあります。

質問(8)

問い:どうにもならないくらい悲しくてつらい時は、どうやって立ち直れば良いのですか?

答え:人が生きていくということは悲しいことやつらいことがいっぱいあります。お釈迦様はこれを「四苦八苦」と言いました。そして、悲しみやつらさには必ずその理由や原因があります。その理由や原因は自分自身がつくったものと、他人がつくったもの、または自分と他人がつくったものいろいろありますが、悲しみやつらさを感じるのは自分自身です。
まず、自分で悲しみやつらさの原因・理由をよく考えてみることです。その原因を取り除けば自ずと解消します。また、どうしてもその原因が取り除けない場合は、自分という殻(から)から一歩踏み出してみることです。自分から離れて自分を客観的に見ることが出来たら、悲しみやつらさも客観的に見ることができます。これを昔から「無我の境地」と言っています。
あなたのまわりにはたくさんのほとけさまがいます。どんなに悲しくどんなにつらくても、必ず立ち直ることができます。あなたを助けてくれるほとけさまは、あなたのすぐ隣にいる人かもしれません。

質問(9)

問い:病気をしたときの人間の心はなぜ弱くなるのでしょうか。また、病気になる前と同じくらい強い気持ちを持つにはどうしたらよいのでしょうか。今後生きていくのに不安でいっぱいです。

答え:病気になることは大変つらく苦しいことです。肉体的な苦痛はもちろんですが、精神的(心の)苦痛がいかほどかは、あなた自身が一番良く知っていることと思います。
病気という漢字が表しているように、病気は気(心)の健康を失わせるものです。あなたがここに「今後も生きていくのに不安でいっぱいです。」と記されておりますが、心中察するにあまりあります。
しかし、人間として生を受け、貴重な今という時を過ごしているとき、落ち込んでいたり、悩んでばかりいることは大変もったいないことです。
世の中には、「自分が病気になったことで、看病してくれた家族や、見舞ってくれた知人の心の機微に接し、ありがたかった。」又は、「自分が病気になったために、違った目で世の中が見えるようになった。」等々、病気になったために健康の時には経験できなかった色々なことを経験できた。今は病気を楽しんでいる、という人もいます。

【雨の日には雨を愛し、病気の時は病気を楽しむ!『日々これ好日』】「今」という時を大事に生きたいものです。

質問(10)

問い:不動様とはどんな方なのでしょうか。

答え:皆さんがご自宅で法事を営まれる時、床の間に十三仏の掛け軸をお掛けになりますが、お不動様は十三仏の中の一人です。お不動様は何とも言えない恐ろしい形相をしていますが、これは私達人間の心の中に巣くういろいろの煩悩や悪魔の心をやっつけるためなのです。右手に持つ剣は煩悩や悪い人間関係を断ち切る刀です。左手に持つ縄は悪魔の心や悪い人間を縛るためのものです。背中の炎は敵や煩悩を焼き払うためのものです。
頭の上には蓮の花を載せていますが、これはお不動様の前で正直に懺悔した方を極楽へ運んであげようという印です。
あなたはお不動様の前に立ったらどんな懺悔をしますか。

質問(11)

問い:七福神の「福禄寿」はどんな願いを叶えてくれるのですか。

答え:当寺では小幡七福神の一つ福禄寿をお祀りしています。福禄寿は文字どおり幸福(福徳)の福、財・富を表す禄、健康・長寿の寿の三文字から成り立っており、中国道教の理想の象徴で、福と禄と寿命の三徳を備えていると言われています。
さて、質問のどんな願いを叶えてくれるのかということですが、お賽銭を上げてお願いすれば、何でも願いを叶えてくれるという神様ではありません。合格や健康や富を祈願しても、勉強しなければ志望校には受からないし、好きなものを食べ放題では健康は保てません。また、働かなくてはお金は入りません。仏教がインドで生まれ中国を経由して日本に伝わる時、その土地土地の習俗や宗教を取り込んで伝えられました。七福神はその典型であり、インド・中国・日本に古くから信仰されてきたおめでたい「神」を集めたものです。七福神は「神」という字が付いていますが、仏教の教えには元々神様はありません。仏教では各人が心に願いを持ち、その願いを達成するために一生懸命努力をする、その過程が大切なんだと教えています。結果は後から付いてくるものであります。幸福と富と健康を心に願い、常に努力を重ねる事によってはじめて得られるものです。その結果が写真のような笑顔となるのです。
福禄寿から与えられるのではなく、自分の努力によって福禄寿のような笑顔が得られるのです。自分の事ばかりを考えず、他人の事を考え自分を客観的に見られる目(これを「仏の目」と言います)を養う事がこの笑顔を作ります。

【春植えざれば、秋実らず】

質問(12)

問い:私の5歳の息子は自閉症です。どのように育てればいいか将来が不安です。

答え:以前は、子どもに自閉傾向があると、周囲から「母親の育て方が悪いからだ。」などと非難されて、母親は自責の念で苦しめられた方が多かったと聞いています。
しかし、最近は自閉症の原因は親の育て方ではなくて、脳の機能の働きに生まれ付き障害があることが原因だと言うことが広く知られてきました。
あなたの息子さんはあなたを選んで生まれてきたのです。
自分の子どもに障害があると分かったときから、その障害を受容するまでのお母さんの心理は一般的には以下の変遷をたどると言われています。

【衝撃】
→否認(この診断は間違っている)
→怒り(なぜ自分に、運命・周りが悪いなどと腹が立つ)
→神との取引(治るためなら何でもすると神仏に誓う)
→抑鬱(治らない、何もする気になれない誰とも関わりたくないと言う気分になる)
→受容(心で事実を受け入れる)
これは、キューブラ・ロスというアメリカの精神科医が末期ガン患者への「死」の受容についてインタビューを通じて多くの患者の心理がたどる変化を分析したものです。
自分の死と子どもの障害という全く異質な事柄ですが、それを知ったショックとショックを乗り越えるいわゆる「受容」は心理的には共通すると言われています。一方、この二つ、つまり死の受容と障害の受容とは大きな違いがあります。末期ガン患者は死を受容して死んでいきますが、子どもの障害を受容した母親の心にはその後、「希望」・「目標」・「生き甲斐」など積極的な面が出てきます。例えば、同じ悩みを持つ母親達がグループや組織を作りお互いに助け合ったり、行政に働きかけて福祉施策を引き出したり、あるいは福祉施設を立ち上げて運営したりして活躍している例は枚挙にいとまありません。
あなたが障害を受容するまでには時間がかかることでしょうし、辛い思いもいっぱいするかもしれません。しかしあなたは決して孤独ではありません。同じ悩みを持つ人はこの世の中にいっぱいいます。そして、あなたと息子さんを支援してくれる、人的・経済的・心理的各種施策がいっぱい用意されています(市町村の保健師、特別支援教育、各種福祉手当、障害年金、グループホームなどの福祉施設、介護保険などなど)。あなたとお子さんは頑張る必要はありません。
決して悩みを一人で抱え込まないでください。役場や児童相談所、教育機関等に相談してください。

観音様は悩んだり苦しんだりしている人を助けてくれる仏様です。「観音様助けてください。」という声(音)を出してください。観音様はその音を聞いて(観じて)いろいろな人の姿を借りてあなたと子どもさんを助けるために現れることでしょう。